
鉱山街の片隅にある「鉱石堂」の店主、ユラが扱う品々の中で、もっとも風変わりで傷つきやすいのがパリパリ水晶だった。
見た目はどこからどう見ても、青みがかった透明な水晶のクラスターだ。陽の光にかざせば虹色のプリズムを放ち、ひんやりとした硬質な重みがある。
だが、ひとたび指先で強めに弾けば、薄氷が張った水面のように微細な亀裂が走り、噛み砕けばガラス細工めいた甲高い音を立ててパリパリと崩れる。味は、初雪をそのまま固めたような、微かな甘みと冷涼さだけを残して舌の上で消え去るのだった。
「これ、本当に宝石なんですか?」
店を訪れた少年が、小さな欠片を指でつまみ上げながら目を丸くした。
「宝石でもあるし、お菓子でもあるよ」ユラは硝子のピンセットを置き、柔らかく微笑んだ。
「ただ、とても繊細なんだ。この水晶は、夜明けの霧と強い寒暖差がある岩肌でしか結晶化しない。触れる者の感情の波にも反応して、持ち主の心がざわついていると、掌の中で勝手にパリパリと音を立てて粉々になってしまう」
少年はおそるおそる水晶を手のひらに載せた。
息を呑む静寂の中、透明な石は静かに青い光を湛えている。
少年がほっと息を吐き、口角を上げると、水晶はひときわ澄んだ輝きを放った。
「僕の心、今は静かみたいです」
「そうだね。とても澄んでいる」
少年が欠片を口に含むと、軽快で小気味よい音が店内に響いた。
それはまるで、小さな星が静かに砕け散る音のようだった。
喉を通るひんやりとした爽快感に、少年の顔がぱっと明るくなる。消えてしまうからこそ尊い、一瞬の美しさと脆さを秘めた結晶。
街の喧騒から離れたこの店で、パリパリ水晶は今日も、静かな心を持つ誰かの訪れをひっそりと待っている。







