
「ガシャン!」背後で大きな音が聞こえて私が振り向くと、薄暗いアンティークショップの床一面に、鮮やかな青い砂が広がっていた。
棚の最上段に飾られていたはずの、大人の頭ほどもある古びた砂時計が無残に砕け散っている。
店主の老人が両手を広げたまま固まり、店内に充満していた埃っぽい静寂が一瞬にして吹き飛んだ。
割れたガラスの破片の間から零れ落ちたその砂は、どこか奇妙だった。
夕暮れの西日が差し込む板張りの床の上で、光を反射するどころか、周囲の影を吸い込むように鈍く発光している。
さらさらと波打つように広がる砂粒は、まるで床の隙間を探して逃げ出そうとしている生き物のようにも見えた。
「触るなよ」
絞り出すような老人の低い声に、思わず伸ばしかけた指先を止める。
靴底の下で、踏み潰された微かなガラスがジャリと音を立てた。
砂の真ん中に、何かがある。
何百年もの間、砂の中に埋もれていたのだろうか。
ガラスの檻から解放された青い山の中から、手のひらサイズの錆びついた真鍮の鍵が、ゆっくりと頭を覗かせていた。
時が止まっていたはずの空間に、かすかに冷たい風が通り抜ける。
私は息を呑み、鍵と、老人の青ざめた横顔を交互に見つめた。
日常と非日常の境界線が、あの音と共に音を立てて崩れ去ったのだと、その時直感していた。








