
ずっしりとした土を踏みしめながら、僕は森の奥へと続く細い小道を歩いていた。
昨夜降った激しい雨のせいで、足元は水分をたっぷりと吸い込み、長靴が沈み込むたびに低く重たい音を立てる。
アスファルトの乾いた硬さに慣れきっていた足の裏が、大地そのものの生々しい弾力を思い出すようにじわりと押し返してきた。
湿った黒土の濃密な匂いと、濡れた杉の葉の清涼な香りが混ざり合い、肺の隅々まで満たしていく。
都会で暮らしていると、地面を踏んでいるという感覚を忘れてしまう。
ビルから駅へ、駅からオフィスへ。
舗装された平坦な床の上をただ効率よく滑るように移動するだけの毎日は、どこか身体が宙に浮いているようで、自分の存在まで軽くなっていく気がしていた。
立ち止まり、深く息を吐き出す。
見上げれば、重なり合う木々の隙間から、雨上がりの柔らかな木漏れ日が筋となって降り注いでいた。
葉の先から落ちた雫が、足元の水たまりに波紋を広げる。
しゃがみ込み、素手でひとすくいの土を握りしめてみた。
指の間から冷たく湿った感触が伝わり、微かなざらつきが皮膚を刺激する。
ここには、何万年もの時間をかけて朽ちた葉や命が蓄積されていて、その圧倒的な重みが今、僕の体重を受け止めているのだ。
立ち上がって再び歩き出す。
一歩踏み込むごとに、身体の芯に確かな重心が戻ってくるのがわかった。
頼りなく揺らいでいた心が、このずっしりとした土の深さに支えられて、静かに根を下ろしていくようだった。








